固定価格買取制度導入の背景

再生可能エネルギーである太陽光を活用した発電方法は、二酸化炭素を排出せずに電気を作り出せるため、地球温暖化の進行を食い止めるための有効な手立てとして注目されています。
しかし、発電に必要な設備を用意するのに多くのコストがかかること、発電される電力の量が天候に左右されること、供給が増えれば電力価格が変動する可能性があることなどから、安定して初期投資費用を回収して利益を出すことが難しいとして、なかなか事業者が太陽光発電事業に参入しづらい状況がありました。
そこで、そのような状況を解消して、再生可能エネルギーの普及に繋げるためにと導入されたのが、固定価格買取制度です。
この制度の適用を受けると、国が定めている期間は電力を固定価格で買い取ってもらえるようになるため、安定して収益を上げやすくなるということで、発電設備の導入に踏み切る事業者が増えました。

制度の根拠となる法律の改正により権利失効の恐れも

ただ、そうやって設備の導入に踏み切った事業者の全てが、すぐに売電を開始して再生可能エネルギーの普及に貢献をしている訳ではありません。
中には、設備を整えて固定価格買取制度の適用を受けるために必要な設備認定を取得しただけの状態で、設備を稼働させずに放置している事業者も多くいます。
従来はこのように設備を未稼働の状態にしていたとしても、固定価格で売電する権利が失われてしまうことはありませんでした。
しかし、固定価格買取制度の根拠となっているFIT法改正に関しての議論が進められた結果、2017年の4月以降は、稼働していない設備は、制度適用の条件を満たしていないとして認定が取り消され、固定価格で売電する権利が失効する見込みとなりました。

権利失効によって痛手を受けることを回避するためには

固定価格買取制度の適用を受ける前提で事業計画を立てていた事業者にとって、権利失効は大きな痛手となるでしょう。
失効を避けるためには、基本的には、遅くとも2017年の3月中には電力会社と接続契約を結び終え、設備の稼働をスタートさせておく必要があります。
電力会社と接続契約を結ぶまでには色々と検討すべきことがあるため、9か月ほどの期間が必要になると言われています。
ですから、期限までに契約締結が間に合わないことがないよう、早めに申請を行うようにしましょう。
ちなみに、設備認定を取得してから改正FIT法施行までの間に9か月も期間がないという事業者向けには猶予期間も設けられているので、設備認定を取得したばかりの事業者の方はご安心ください。
期限までに電力会社と接続契約を結ぶことがどうしても難しい場合には、失効する前に権利を売却して現金化することを検討してみてはいかがでしょうか。

売電価格は下落傾向に

再生可能エネルギーの固定価格買取制度は、電力会社に対して国が定めた価格で、20年間という長期にわたって発電した電力を買い取るよう定めています。
固定価格買取制度を利用して太陽光発電の売電を行えば、安定した発電ができる限り、20年に亘って安定した収入が確保できます。
固定価格買取制度の提供を受けるには、一定の設備要件を備えて国に申請をして認定を受ける必要があります。
認定を受けた年の価格が20年間固定されることになりますが、制度導入時の2012年は10kw以上で40円、10kw未満で42円でしたが、2013年には36円と38円、2014年には32円と37円、2015年には29円と33円、2016年には24円と31円と下落傾向にあります。

売電価格は毎年改定されている

固定価格買取制度は地球温暖化防止や安心のエネルギー確保を目的に、再生可能エネルギーの普及促進を目指して創設されました。
そのため、当初は売電を行う事業者等の参入を促進するため、魅力的な高単価となっていました。
もっとも、電力会社だけではその買取負担が重くなるため、一般家庭などの電気利用者に電気料金の支払いと合わせて賦課金を課すなどして財源を確保していたのです。
しかし、20年間続く固定価格ですから、高単価は電力会社の競争力低下や経営への負担もかけかねず、国民負担を強いることへの不満の声も上がってきます。
そのため、毎年の価格見直しの度に、次第に売電単価が低下する状態になっています。

新規で申請を行うより便利で有利な権利購入

売電単価の低下は何を意味するかというと、申請した年度によって収益に大きな差が出ることを意味します。
たとえば、2012年に10kw以上の設備認定が受けられれば40円で20年買い取ってもらえる権利が取得できるのに対し、2016年では24円で20年と収入は半分ほどに小さくなってしまうわけです。
そのため、新規で申請を行うよりも、単価が高い権利を設備ごと購入するなどしたほうが有利に働くケースが少なくありません。